newolds’s diary

古いものや新しいこと、趣味のはなし

アースの話

アンティークオーディオが好きであれば、ノイズがまず一番最初に気になるところだと思います。デジタルでは無音から急にバーンと音が立ち上がるところも、アナログではそうはいきません。だけどその分暖かく豊かで、広がりのある音と佇まいに魅力を感じていると言うのが彼らの言い分、でもSN比はやっぱり気になります。だってボリューム上げるとブーン、シャーなんて音がするのは興醒めですから。かく云う私もそんな1人です。私、35年前にアナログ通信機器の製造会社に勤めておりまして、その頃は各種測定機器を使って出荷検査のデータを取るなどを生業としておりました。アナログ通信機器ですから当然SNなどを調べます。出荷にはノイズが何々db以下であることなどと書かれたテスト仕様がありまして、たまーに合格範囲を結構な数値で逸脱している機器があったりします。大体は、製造中の個体調整ミスなのですが、そのまた、たまーにロット全体にノイズが乗っていて、微妙に合格範囲を外れてる場合があります。まあ、この時点ではロット不良です。もし出荷検査でロット不良になると大変です。全体の影響部品付け替えと検査やり直しですから、納期もあるし。で、大体この様な場合は、トランジスタ とか性能がイマイチなやつに当たったとかが多いと思うのですが、なんとかしなければいけません。

そこでアース。アースってのは、地球のことですから、地球の電圧を示します。電圧の基準、簡単に言うと0vのことを指します。つまり一番ノイズのない状態が0vです。説明が長いのですが、このロット不良と言われかねない機器に有効なのは、アースの取り回しなのです。工場には当然、非常に安定した良いアースが引いてあります。検査には当然これを接続しています。それでもダメな時の話になりますが、「引き方」というものがあるのです。機器と工場のアースとは、細い電線を編み込んだ1cmくらいの長い銅線でつなげていきます。だけど一箇所の接続ではダメで、何箇所か効果的に機器のノイズをアースに流してやる様なつなぎ方をします。これのテクニック次第で劇的に性能の良い(よく見える)機器になるのです。これ、変なつなぎ方をすると、逆にノイズが乗ったりするから不思議です。工場勤めが長いと、こういう感覚的なテクニックがどんどん上手になって、先輩が引いたアースと私が引いたものでは、性能が雲泥の差になります(測定器のメーター上だけなのですけど)。

オーディオ好きのWEBページで、コンデンサ 交換がどうとか、スピーカーケーブルの太さだとかで白熱議論しているのを聞くと、そこじゃない世界があるのになあ、すでにアースとってるのかなあ、とか思います。でも趣味の世界ですから、そこはどうなっても楽しければいいのですよね。出来ない子は可愛いとか。えっ、うち?、うちはアースなんぞ取ってませんよ。ジジ…って音がしてもそれがアナログですから。

…ふう〜、ま、気になりますけどねぇ。

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